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『9プリンシプルズ 加速する未来で勝ち残るために』

MITメディアラボ所長の伊藤穰一氏が提唱する9つのプリンシパル(原理)をエピソードとともに紹介。 

9プリンシプルズ:加速する未来で勝ち残るために

9プリンシプルズ:加速する未来で勝ち残るために

 

9つのプリンシパルはいずれも、「◯◯より△△」という形で表される。比較級になっていることで、判断基準にしやすい、気がする。

1.権威より創発

2.プッシュよりプル

3.地図よりコンパス

4.安全よりリスク

5.従うより不服従

6.理論より実践

7.能力より多様性

8.強さより回復力

9.モノよりシステム

 全編を通して、MITメディアラボ周辺の具体事例をもとに解説されるため分かりやすいけど、その中でも気に入ったものをいくつか。

3.地図よりコンパス

IT系を中心にしつつも、ツールやインフラなどが急速に変化していって、未来が全く予想できなくなっている今、地図はどこまで役に立つのだろうと思う。

地図は、その土地についての詳細な知識と、最適経路の存在を含意している。コンパスは、はるかに柔軟性の高いツールだし、利用者が創造性と自主性を発見して自分の道を見つめなければならない。

簡潔に地図の限界が書かれているが、ここで注意したいのは、コンパスを使う時の方向性だろうと。北を指し示すがごとく、向かわなければならない方向性を持っていないといけない。とてつもないスピードで地図に書かれていた地形が変わったり、手段の進化についていかなければならない。

5.従うより不服従

MITが「不服従賞」を企画した時から、大切にしていた重要な視点。

「言われた通りにしているだけでノーベル賞を受賞できた人はいない」。さらにアメリカの公民権運動は市民不服従なくしては起こらなかったことも続けて説明した。インドはガンディーやその支持者たちによる、非暴力でもしっかりした不服従がなければ独立できなかった。このニューイングランド地方で祝われているボストン茶会事件も、かなりの不服従だ。

 別にノーベル賞を取りたいわけではないけど、いつの時代でも不正義に対して積極的に肯定せず黙っていたとしても、それは共犯であると思う。かつての権威、慣習に対して疑問を持つことから始める、そして良心的な不服従という手段を取る、そんな人間になりたい。

6.理論より実践

携帯電話の小型化同様、例えばDNAを調べるにしても、プラクティスにかかる費用と時間は格段に下がっている。しかしもはやそれだけではない。

理論より実践ということは、加速する未来では変化が新しい常態となるので、実際にやって即興するのに比べ、待って計画するほうが高い費用がかかるといこうことを認識するということだ。

理論を積み重ねることでリスク回避を担保しようとするのは当然の考えだが、もはやそれそのものそれがリスクになりうると指摘されている。ハッカソンという手段がIT系に限定されるものではなく、伝統産業とのコラボレーションが見られることにはこういった背景があるのだろう。

他のプリンシパル(原理)も興味深い。

今後に向けては、不確実性を前提として以下にそれに向き合うか。当たり前だが、受動より能動、最初のプリンシパルかもしれない。1にも2にもプロトタイピング、かな。