ブックエンド

本と本のあいだのあれ

『戦争と一人の作家:坂口安吾論』

またじっくり読みたくて佐々木中

坂口安吾をちゃんと読んだことがなかったので、あらかた代表作だけでも読んでからがよかったか。

戦争と一人の作家: 坂口安吾論

戦争と一人の作家: 坂口安吾論

 

 坂口安吾を語る佐々木中を読んでいると、哲学することと著述することとの切っても切れない関係性を見る気がする。作家と呼ばれる人の全ての人がそのような表現を試みているわけではないと思いつつ。

また、軍国主義から大戦への突入し降伏するまでの間、平時からしたらとんでもなく馬鹿みたいな事柄に対して、多くの知識人が抗ったり、恭順したり、また筆を折ったのだろうと思う。そういう意味ではとても貴重な記録でもあるような気がする。一読しただけでは、何らか分裂的な思考を抱えていたのではないかと思ってしまうが。

 

巻末に付録されていた「爆心地の無神論者-『はだしのゲン』が肯うもの」は興味深く読めた。小学校か中学校の図書館で読むものといえば、『はだしのゲン』だった。そして、現役の大統領が広島を歴史事情初めて訪問したことは大変な騒ぎだった。これもいわば漫画という出口なだけであって著述であり、哲学だと受け取った。政治の善悪を語る気はサラサラないが、歴史の証人が残したものを蔑ろにするのは罪だと思う。