ブックエンド

本と本のあいだのあれ

『戦争と一人の作家:坂口安吾論』

またじっくり読みたくて佐々木中

坂口安吾をちゃんと読んだことがなかったので、あらかた代表作だけでも読んでからがよかったか。

戦争と一人の作家: 坂口安吾論

戦争と一人の作家: 坂口安吾論

 

 坂口安吾を語る佐々木中を読んでいると、哲学することと著述することとの切っても切れない関係性を見る気がする。作家と呼ばれる人の全ての人がそのような表現を試みているわけではないと思いつつ。

また、軍国主義から大戦への突入し降伏するまでの間、平時からしたらとんでもなく馬鹿みたいな事柄に対して、多くの知識人が抗ったり、恭順したり、また筆を折ったのだろうと思う。そういう意味ではとても貴重な記録でもあるような気がする。一読しただけでは、何らか分裂的な思考を抱えていたのではないかと思ってしまうが。

 

巻末に付録されていた「爆心地の無神論者-『はだしのゲン』が肯うもの」は興味深く読めた。小学校か中学校の図書館で読むものといえば、『はだしのゲン』だった。そして、現役の大統領が広島を歴史事情初めて訪問したことは大変な騒ぎだった。これもいわば漫画という出口なだけであって著述であり、哲学だと受け取った。政治の善悪を語る気はサラサラないが、歴史の証人が残したものを蔑ろにするのは罪だと思う。

『ぷしゅ よなよなエールがお世話になります』

元々よなよなエールが好きだったこと、それと誰かが優れたビジネス書として紹介していたのを見て読んでみた。

ぷしゅ よなよなエールがお世話になります

ぷしゅ よなよなエールがお世話になります

 

 ヤッホー・ブルーイングの社長でありながら現場からの叩き上げ社員ということで、とても読みやすい。母体である星野リゾートの星野佳路社長との関係や楽天にオープンしたお店の店長としての当時の楽天との関係など、結局仕事の大部分は人と人との関係性によって説明がつく気がする。もちろんコンテンツたる事業内容や数字のお話も重要ではありつつも。

 

しかし、これを読み終わると、ローソンに寄って何かしらを買ってしまうのを免れない気がする。

『仕事のスピード・質が劇的に上がるすごいメモ。』

仕事場の机のポストイットをよく使うのだけど、ごくごくたまに自分で書いたメモが分からないという悲しいことがあり、ちょっとメモの効率をあげたいなと一冊。

 

仕事のスピード・質が劇的に上がる すごいメモ。

仕事のスピード・質が劇的に上がる すごいメモ。

 

 メモの本でありながらも、半分くらいはアイディア術みたいな感じで、ちょっとタイトルに違和感。ただ、自由な発想は応援してくれそうだし、とりあえず出来るところから、ということでメモに日付をつけたり、「○×△」とかわかりやすい目印からやってみようかと。

『キャパの十字架』

深夜特急』の沢木耕太郎が追う、「崩れ落ちる兵士」の謎。

キャパの十字架 (文春文庫)

キャパの十字架 (文春文庫)

 

 スペイン戦争の象徴として、またノルマンディ上陸作戦に並ぶロバート・キャパの傑作として知られる「崩れ落ちる兵士」は本当にキャパによって撮影されたものなのか。

戦争のただ中を描いているにしてはあまりにも完璧な瞬間であり、もし本当だとしたら敵を背負った状態で撮影したことになるが、果たしてそれは可能なのか。

また、当時キャパと行動していたゲルダ・タローとは。彼らが使っていただであろうライカとローライフレックスの当時のカメラを使い、実際に撮影場所と思しき場所まで行っての結論とは。

高木彬光『成吉思汗の秘密』を思い出した。

 

『定本 夜戦と永遠-フーコー・ラカン・ルジャンドル(上・下)』

存在は気にしていたけど、その取っ付きにくさとボリュームから後だおしにしていた佐々木中の「夜戦と永遠」

 

とりあえず、先に『切りとれ、あの祈る手を-〈本〉と〈革命〉をめぐる5つの夜話』と『踊れわれわれの夜を、そして世界に朝を迎えよ』 を読んでおいてよかった。いくぶんか読みやすいそれらの内容を思い出しながら、一方で有益な新しい出会いに驚きながら読み進めた。

精神分析の祖としてのフロイトからフランスの現代哲学へのつながり、そして今日のキリスト教イスラムの対立や社会における諸問題まで深い知をかなりの速度で走り抜けるような一冊。

『世界史の10人』

基本的には勉強なんだけど、読み物としても面白く、何となく教養な読み物が欲しくてこちら。

世界史の10人

世界史の10人

 

 論語の本と迷ったけど、安定の出口会長ということで。

 

世界史の教科書に辛うじて人物名だけ登場するくらいの、そこまでメジャーではないけれども、歴史上の偉人として評価している方々の紹介。

さすがに読み物として面白いし、その時代背景や社会情勢についての解説があって読みやすい。仕事に直接活かせるかって言うと、それはそれで自分の中でうまく噛み砕いて結び付けないといけない気はするけど。

あと、個人的に面白かったのは、中国や西洋の話は日本とも関わりが強いのですっと入ってくるのに比べて、やっぱりロシアやモンゴルは少し文化的に距離があるというか、呼んでて新鮮でした。

『虐殺器官』

出張のお供にと思って、一冊。昨年度(『屍者の帝国』)からの続きということで、『ハーモニー』と悩んだ結果。 『ハーモニー』でもよかったけど、何となくおどろおどろしいものが読みたくて。

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

 

実質的には『屍者の帝国』と地続きになっているような、民間軍事企業が跋扈するような場所において「人間が人間たる境界はどこにあるのか」ということについて、つい惹かれてしまう言葉を駆使して描かれている。